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クリニック開業医におすすめ、「クリニック労務管理の『やってはいけない』」

・クリニック専門の社労士が、クリニック経営でつまずきがちな「労務問題」を解説


クリニックを開業するにあたって、意外と見落としがちになるのが「労務管理」です。

これまで医師として病院に勤務してきた先生方も、自身のクリニックを開院するとなると、医師でありながら経営者、という特殊な立場になります。

そこで避けられなくなるのが、スタッフとの雇用関係や労働にまつわる、法令上の知識です。

本書では、医療業界で社労士として活躍してきた著者の大杉宏美氏が、クリニックにおける労務管理でつまずきやすいポイントを解説しています。

今回の記事では、「クリニック労務管理の『やってはいけない』」の要点をまとめました。

・クリニックを経営する院長側の視点に寄り添って書かれた本


「クリニック労務管理の『やってはいけない』」は、これからクリニックを開院する医師(院長)に向けて書かれた本です。

既にクリニックを開院している場合でも、今後スタッフとの間で起こりうる労務上の問題をあらかじめ知っておくために役立ちます。

たとえば、冒頭の第一章は、院内スタッフの「残業代」や「時間外勤務」について、労働基準法に抵触するケースが取り上げられています。

医療スタッフは勤務時間が超過しやすい問題があり、その際に「1日8時間」と「1週40時間」のどちらを超えたときに残業代を支払わなければならないのか、という問題が挙げられます。

また、タイムカードの切り方は基本的には「1分単位」で発生するものですが、実際の労働時間とずれている場合はどのように対策を取ればいいか、述べられています。


この場合だと、実際の労働時間と合わせるために在院時間とはべつに「始業時刻」と「終業時刻」の記録を取るようにする、など労働実務に関する対策がQ&A形式で分かりやすくまとめられています。

こうした労働実務に関する知識は、一般企業の経営者であれば基礎的な範囲のものですが、これからクリニックを開院する開業医にとっては、本業の診察などの合間を縫って対策を取る必要があります。

そういった場合に、クリニック経営で問題となりやすい労働基準法にまつわる要所を短時間で抑えることに役立ちます。

著者の大杉宏美氏は、数々のクリニック経営をサポートしてきたエキスパートの社労士であるため、こうしたクリニックの労務事情に詳しく、クリニックを経営する院長の視点に寄り添って書かれた本と言えるでしょう。

・院内で起こりがちなスタッフとの労務問題についてもアドバイス


単純な法律上の規則をワンパターンに紹介するのではなく、院長と院内スタッフとの間に起こりがちなコミュニケーションの問題や、クリニックを私物化するスタッフなど、クリニックで起こりうる問題を想定して書かれている、という点が本書の強みです。

たとえば、クリニックでは男性医師が院長となり、院内スタッフである看護師や医療事務スタッフは女性であるケースが多いことを挙げています。

そうしたときに立場や性別によって異なるコミュニケーションの取り方の違いから、労務上の問題へと発展することがあります。

具体的な例としては、院長と女性スタッフとの間でコミュニケーションに溝が生まれることで、スタッフが結束して、自院への不満を共有しはじめたり、勝手に院内ルールを決めてしまう、というケースを取り上げています。


クリニックではこうしたスタッフとの対立が生まれやすく、コミュニケーションの問題を放置しているといずれ労務問題に関わってくることを指摘しています。

院長先生とスタッフでは、そもそも立場が異なります。院長先生は経営者という立場から、価値判断のベクトルはクリニック経営に向いているでしょう。それに対し、スタッフにとってクリニックは勤務先の1つでしかなく、ベクトルは自分自身あるいは我が子や家族に向いています。

(中略)

また、看護師や歯科衛生士などの資格者に対して、技術的な基本は分かっているだろうという思い込みも禁物です。説明もなく「これやっといて」という指示だけして、相手が従っていたとしても、前にいたクリニックや病院とやり方が違う、自分の考えと違う、と心の中では納得していないことも多々あります。

「クリニック労務管理の『やってはいけない』」大杉宏美著 クレドメディカル刊(2021)kindle版

このように院内で起こりがちな事例を取り上げて、それぞれのケースについて回答していきます。

クリニック事情に詳しい専門の社労士が、クリニックの院長向けに労務問題を解説した本というのはジャンルとしては珍しいため、そういった意味で貴重な本です。

これからクリニックの開院を考える医療関係者の方におすすめする一冊です。

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