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明日から役立つ「コーチング」の考え方「図解 コーチングマネジメント」書評

「コーチング」という言葉を聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

野球やサッカー、テニスなどのスポーツコーチを思い浮かべたり、誰かに技術的なアドバイスをすることを思い浮かべる方もいるでしょう。

日本で「コーチング」という言葉が広がり始めたのは90年代後半~2000年頃と言われます。

現在では、企業にも広く浸透している考え方ですが、「コーチング」に馴染みが薄かったり、具体的に何を指しているのか分からない、という方もいらっしゃるかと思います。

「図解 コーチングマネジメント」は、日本において「コーチングの第一人者」と言われ、コーチングの概念を世に広めた伊藤守氏の著作です。

今回は、「図解 コーチングマネジメント」を参考に、「コーチング」の基本的な考え方をご紹介します。

・「コーチング」とは何か? ――「コーチング」と「ティーチング」の違い


「コーチング」を伝えるときに、よく引き合いに出されるのが、スポーツの世界のコーチの存在です。

一般にスポーツコーチというと、その分野に精通しているプロが、選手たちに技術的な指導を行うものと思われがちです。

しかし、試合中や練習中に声を掛けるコーチは、必ずしも技術的な指導のみを行っているわけではありません。

選手とコーチというのは、会話のなかでお互いにコミュニケーションを取りながら、どうすれば上手くなれるのか、競技で勝つことができるかを話し合っています。

このとき、一方的にコーチが話し続けて、選手がただ頷くだけであるならば、それは「コーチング」ではありません。

コーチの側から一方的な技術の指導を行うことは「ティーチング」といいます。これは学校のクラスで教師が教壇に立って「国語」や「算数」の基礎を教える姿勢と同じものです。

「ティーチング」は、「教える側」から「教わる側」への一方通行の指導です。

「コーチング」は、答えを教えるのではなく、双方向で伝え合いながら、答えを見つけていく手助けをします。

「ティーチング」は答えを一方通行に教えること、「コーチング」は双方向で伝え合いながら答えを見つけていくこと、と考えるとよいでしょう。

・「コーチング」は、対象の専門分野の知識や技能がなくても行える


本書のなかでは、スキーのインストラクターが、テニス練習生のコーチを行った例が紹介されています。

畑違いの分野でコーチを行っても、うまくいかないのでは? と思われるかもしれませんが、このスキーコーチは抜群の成果を上げ、プロのテニスコーチよりもうまいレッスンを行ったといいます。

このときに、スキーコーチがやったのは、「ティーチング(答えを教える)」ことではなく、「コーチング(伝え合って答えを見つける)」だったのです。

スキーコーチはテニスの技能については素人なので、代わりに生徒たちに尋ねていきました。

テニスのコーチは「ボールをよく見て」と一言で言ってしまうところを、このスキーコーチは「ボールはどんな回転をしていますか?」と尋ねたそうです。

本来は見えないはずのボールの回転を見ようとすることで、結果的に生徒はボールをよく見るようになったといいます。

テニスコーチは、自らが技能を身に付けているために、生徒の目線に合わせた質問ができずに、一方的に教えるだけになっていました。

・「コーチング」の本質は、会話によるコミュニケーション


スポーツ界の往年の名選手が、引退後に監督やコーチに就任することがあります。

しかし、現役時代にどれほど選手として活躍していたからといって、名監督や名コーチになるとはかぎりません。

その理由を一言で言うならば、「会話」にあると著者の伊藤守氏は指摘します。

名選手はプロの技術を身に付けていますが、それは「コーチング」の技能とは別物です。

「コーチング」とは、相手の話を聞くことによるコミュニケーションであって、そういった「会話」の技能を育ててきたかどうかは人によります。

ビジネスにおいても、相手の話をうまく聞きながら、周囲の社員を成長させていくリーダーやマネージャーが求められています。

「相手の話を聞くこと」の重要性については、前回のコラム記事(「聴く姿勢で職場は変わる」)で取り上げていますので、よろしければご覧ください。

・「コーチング」を行うと、どのようなことが起こるか?


コーチングの主体となるのは「会話」ですが、なぜ会話によって相手の成長を促すことができるかというと、「話す」ことによってアイデアに気が付けるようになるからです。

誰かと話をしながら、「自分はこんなことを考えていたんだ」と気が付いた経験はありませんか?

「人は、自分の内側の情報を一度外に出さないと認識できない」と著者の伊藤守氏は述べます。

指導者が一方的に教える「ティーチング」では、このような気付きは起こりにくいものです。

「話す」ことには、ものごとを自分で考えて答えを出すプロセスが含まれています。

こうした気付きの機会を与えるために、会社のマネージャーやリーダーはときに質問を投げかけ、「聞き役」に徹することが求められているのです。

・会社における「コーチング」の有効な領域


ここまで「コーチング」の考え方について見ていきましたが、いくらコーチングといえど、万能の技術ではありません。

会社に「コーチング」の考え方を導入するときに、対象となる人や場面によって、「コーチング」が有効である場合と、そうでない場合があります。

たとえば、会社内で最もコーチングが必要な人というのは、経営者やマネージャーをはじめとする「リスクが高い職務を行う、技術や能力の高い人材」だと言います。

次にコーチングの対象となるのは、「リスクが低い職務を行う、未熟な人材」で、新人社員などがこれに当たります。

一方、「リスクが高い職務を行う、未熟な人材」に対して行うのは、「コーチング」よりも「ティーチング」が適していると著者は述べます。

まだ経験の少ない若手社員に大きな仕事を任せる場合には、上司やベテランの経験者が「ティーチング」を行った方が、妥当な判断だと言えます。

「リスクが低い職務を行う、技術や能力の高い人材」については、「コーチング」も「ティーチング」も必要がなく、本人に任せてよいと言います。

企業の中でもとくにニーズが高いのが、「マネージャーがコーチングの技術を学ぶこと」です。

実際に、現場で部下の育成を任せられているがゆえに、「コーチング」の技術が最も必要になります。

「コーチング」に迷ったときは、ぜひ本書を参考にしてみてください。

(了)

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