1. HOME
  2. ブログ
  3. コラム
  4. 「聴く」姿勢で職場は変わる「優れたリーダーは、なぜ『傾聴力』を磨くのか?」書評

BLOG

ブログ

コラム

「聴く」姿勢で職場は変わる「優れたリーダーは、なぜ『傾聴力』を磨くのか?」書評

仕事を進めていくときに、部下や周囲の社員とのコミュニケーションで悩んだことはありませんか?

「優れたリーダーは、なぜ『傾聴力』を磨くのか?」の著者・林健太郎氏は、「9割の上司は、部下の本音を聞き出せていない」と、本書のなかで述べています。

相手の話を「聞く」というと、受け身的なものに捉えられがちですが、積極的に耳を傾けて「聞く」ことができれば、相手との関係が見違えるほど変わることがあります。

今回は、ビジネスシーンにおいても重要な『聴く力(傾聴力)』を身に付けるコツを探ります。

・なぜ、ビジネスにおいて『相手の話を聞く』姿勢が重要なのか?

会社で働くことに対する価値観の変化


かつての会社の上下関係といえば、仕事で上司が言ったことには黙って従うのが当たり前、という価値観がありました。

しかし、こうした強い上下関係のもとで成り立つ会社運営は、部下の成長意欲や、自分でものごとを考える意識を奪ってきたとも言えます。

終身雇用制が成り立っていた時代には、よくも悪くも「会社や上司に従って働いていれば、日々の生活は保たれる」ので、どんな上司のもとで働いても、耐え忍ぶのが美徳とされる風潮がありました。

現在では終身雇用制が残っているところはほとんどなく、「会社や上司の言うことを聞いていれば安泰」とはかぎりません。

バブル期前後の世代では、部下に有無を言わせず働かせる側面がありましたが、このような価値観は時代錯誤のものとなりつつあります。

人材の流出を招く


部下の話を聞く姿勢を失えば、「理不尽な上司のもとでは働きたくない」という理由で、人材の流出が起こります。

過去のコラム記事(「新しい世代のキャリアデザイン」)でも取り上げたように、近年の新卒社員の傾向として、「成長のためなら離職もためらわない」アンケート調査結果が出ています。

「この会社や上司の下では自らの成長機会がない」と判断されれば、すぐに離職に繋がるケースもあり得ます。

今後、「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」へ移り変わるとも言われており、いずれ転職が当たり前になる時代がやってくるでしょう。

こうした人材の流出を防ぐためにも、「部下や周囲の社員の話に耳を傾けられること」が、すべてのビジネスパーソンに求められています。

・「聞き上手」と「聞き下手」の違い――傾聴のコツ


会社から「部下の話に耳を傾けて、情報を把握しておくように」と言われたものの、どのように聞いていいものか分からない、という方もいらっしゃるかと思います。

「聞き上手」と「聞き下手」な上司の違いについて、本書のなかで「聞き上手な上司は泳がせるのが上手く、聞き下手な上司はアドリブに弱い」と述べられています。

これはどういうことかというと、「聞き下手」なひとというのは、聞くことが苦手なので頭のなかで事前に会話の展開を考えている、といいます。

相手がこう来たら、こう返す、そのあとこの質問をする……、という風に事前に考えてしまっている。

すると、いざ部下の話を聞こうにも、ちょっと想定外の質問を食らうと答えられなくなって、アドリブが利かずに、お互いに居心地がわるくなってしまう、といいます。

一方、「聞き上手」と言われるひとの話し方は、会話のなかで「好きに喋る時間を取らせてくれる(泳がせてくれる)」と言います。

よく名医と言われ、患者さんからも慕われるタイプの医師がいますが、そういう医師は患者さんに診断を下してすぐに帰らせることはありません。

「ほかに気になることは?」と問いかけたりして、患者さんを気遣うといいます。

もし「聞き下手」だと感じているのであれば、一旦、事前に会話を想定することを止めてみましょう。

たとえうまく話せなくても、ひとりで頭の中で考えた言葉を喋るよりも、その場そのときの相手の言葉を聞きながら答えた方が、より自然な声掛けに近づくはずです。

そして、相手に話してもらうきっかけを会話のなかで作るように意識してみましょう。

・「聞く(hear)」と「聴く(listen)」の違い、能動的傾聴のすすめ


「聞くのが苦手」というひとに、試してみてほしいのが、聞くときの姿勢を変えてみることです。

何の意識もせずに、ただ人の話を聞いているだけだと、「100を聞いて、75を捨てる」状態にあるといいます。

この受け身的な聞き方は、英語だと「hear(聞く)」に相当し、目の粗いザルでさらさらの砂をすくっているようなものだと著者は言います。

それに対して、相手の話を集中して聞こうとする態度は、「聴く(listen)」に相当し、なるべく聞き漏らさないように積極的に「聴いている」状態です。

もし、話を聞いている上司が「hear(聞く)」の状態ではなく、積極的に「listen(聴く)」ように努めていれば、その姿勢は必ず相手にも伝わります。

真剣に話を聞こうとしているひとが目の前にいれば、話す相手もつい本音を話したくなるものです。

聞くことが苦手というひとは、まず聞く姿勢を変えるところからはじめてみることをおすすめします。

・面談の時間が取れないときは、「短く、頻度の多い」声掛けで対応する


現代では管理職の負担が増大しており、1人で10人の部下のマネジメントを行うケースも多く見受けられます。

いくら「部下の声を聴く」ことが大事だと思っていても、全員にきっちり面談時間を設けて1on1(一対一)の面談を行っていると、丸一日掛かってもおかしくありません。

現場が忙しく、メンバーと思うように面談の時間が取れなかったり、部下の側にも余裕がないことがあるでしょう。

こうした職場の事情から、最近の面談方法のはやりは「短く、頻度を多く」実施することにあると著者の林氏は述べます。

例えば、「店頭で実演販売を行う社員にどのように声掛けを行うか」という事例が本書のなかで紹介されています。

お客さんの目がある中で面談をすることはできませんし、社員はシフト制で働いているため、1時間も面談時間は取れないと言います。

このようなケースで、「どのタイミングで、どれくらいの時間なら店員さんに声を掛けられるか」とコーチングを担当した林氏は尋ねたそうです。

すると「すれ違いざまに」「二言くらい」という答えが返ってきて、林氏は「それでいきましょう」と答えたといいます。

・短い声掛けを重ねるだけでも、部下の「心理的安全性」は高まる


まとまった面談時間が取れないのであれば、「うまくいってる?」「気になっていることはない?」と、短い声掛けを行うだけでもかまいません。

部下の側にしてみれば、声をかけてもらったことで、「困ったことがあったら相談してもいいんだ」と感じやすく、こうした声掛けは「心理的安全性」を高めるために有効です。

もし、部下からの返事が芳しくなければ、あとで個別に面談時間を取ることができますし、既に問題が起こっているのであれば、部下の方から喋ってくれることもあります。

話を詳しく聞きたいときは「ちょっと3分だけいい?」と言って、部下が負担に感じない範囲の時間で面談の声掛けを行うとよいでしょう。

話しはじめたことで結果的に面談時間が30分まで伸びたとしても、「言いたいことを最後まで喋ってもらう」ことで、部下の不安を取り除くことの方が重要です。

・相手の話を「聴く」ことは、劇的にひとを変えるちからを持っている


話を聞く、というと受け身な態度のように見えますが、積極的に「聴く」ようにすると、相手に思わぬ変化が訪れることがあります。

本書の中では、著書の林健太郎氏が以前にコーチングした例が紹介されています。

会社では抜群に仕事ができるが、メンバーに対するパワハラがある営業部長を、コーチングで何とかできないか、という相談が林氏に持ち掛けられたことがありました。

林氏が実際にこの営業部長に面談すると、最初は突っぱねられたものの、よくよく話を聞いてみると、会社に対する不満や複雑な事情があることが分かったといいます。

その営業部長は、会社で話せずに溜め込んでいたものをすべて話し切ったことで、見違えるように態度が変わったといいます。

そして、自由に質問ができる時間を設けると、コーチングする側の林氏が驚くほど、仕事に対する質問が次々に返ってきました。

会社で問題社員と見られていたこの営業部長は、実際には、非常に向上心の強い社員だったのです。

3ヵ月のコーチング期間を終えて、営業部長がチームに戻る頃には、周囲と協調した仕事ぶりで働くようになっていました。

この事例のように、社員の抱えている思いを最後まで聞き切ることができれば、頑なな態度を取っていた社員も変わりうる可能性を秘めていることが分かります。

著者の林健太郎氏は「部下の可能性を信じましょう」と結んでいます。

・まとめ 十回聞いても、十一回目の答えが同じとはかぎらない


本書のなかでは、相手の話を「聴く」姿勢の大切さを繰り返し強調しています。

はじめのうちは部下に「調子はどう?」「気になっていることはある?」と尋ねても、「いえ、とくに」「別にありません」と答えられることもあるでしょう。

しかし、その日によって部下が相談したり、尋ねたりしたいことは変わっているかもしれません。

たとえ十回、同じことを聞いたとしても、十一回目の答えが同じであるとはかぎりません。

「傾聴の本質は、相手に静かな時間を提供すること」だと本書のなかで触れられています。

誰でもささいなきっかけで変わりうる可能性を持っていて、そのことに相手自身が気付けるように、辛抱強く「聴き続けて」みましょう。

相手が話しはじめるまで、話をさえぎらずに黙ってじっと待ち続けることができれば、その静かな時間を相手に提供したことになります。

その静かな時間のなかで、相手は抱えていたものと向き合うことになります。

溜め込んでいた思いを話し切ることができれば、その社員には見えないところで変化が訪れるでしょう。

部下や周囲の社員との関係で悩んだときは、「聴く」姿勢を大事にしてみてください。

(了)

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事