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「運」任せにしないキャリアの選び方『今すぐ転職を考えていない人のためのキャリア戦略』書評

いまの働き方に違和感があったり、会社に勤め続ける働き方に不安を感じたことはありませんか?

すぐに転職は考えていないけれど、もやもやとした思いを抱えながら、現在の仕事を続けている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

『今すぐ転職を考えていない人のためのキャリア戦略』の著者・田中研之輔氏は、こうしたキャリアの悩みは「働く・稼ぐ・生きる」の三つのバランスがうまく取れないからだと説明します。

今回は、バランスの取れたキャリアを考える上で、とくに悩まれがちな「働き方」という面に焦点を当てて本書をご紹介します。

・「キャリア」は本当に「運」で決まるのか?


自らのキャリアを考える、というと、「何だかハードルが高い」、「未来のキャリア計画を立ててもその通りには進まないから意味がない」、と考える方もいるかもしれません。

実際に、スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授は「キャリアの8割は偶然の出来事によって決まる」という「計画的偶発性理論」を提唱しました。

人生には予測不可能なことばかりで、そのなかでキャリアを作っていくには「目の前の偶然の出来事を最大限に活用すること」が必要だと主張しています。

キャリア形成が偶然の産物なら、キャリアを考えることに意味なんてないじゃないかと思われがちですが、このクランボルツ教授の理論は、「行動を起こすことによって偶然のチャンスが活用できる」という前提に立ったものです。

『今すぐ転職を考えていない人のためのキャリア戦略』というタイトルにもあるように、こうした人生で起こりうる偶然のチャンスを活かすためには、事前に「キャリア戦略」を立てておくことが重要です。

著者の田中研之輔氏は、クランボルツ教授の理論だけではもの足りないと述べ、「キャリアは『運』ではない」ことを本書のなかで強調しています。

・会社という一ヶ所からの収入源に頼ることのリスク


個人のキャリアや働き方を考える上で、避けては通れないのが、収入の面です。

これまでの働き方は、会社という一ヶ所の収入源から給与を得て生計を立てるのが一般的でした。

しかし、2010年台から副業やフリーランスといった働き方が徐々に現れはじめており、とくに2020年を境に多様な働き方を求めるニーズはさらに増しています。

背景にあったのは新型コロナウイルスの流行と、終身雇用制度が限界を迎えていることが挙げられます。

会社という一ヶ所から収入を得る働き方では、コロナ・パンデミックのように不測の事態が起きたときに対応することができず、以前のように安定した会社運営が望めなくなっているのが現状です。

過去のコラム記事(「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」へ)でもご紹介しましたように、日本の終身雇用制度は徐々に崩壊に近づいています。

2019年にはトヨタ自動車社長・豊田章男氏が「終身雇用を守るのは、難しい局面に入ってきた」と発言したことが話題となりました。

こうした社会情勢から、収入源を会社一本のみに絞るリスクが大きくなっており、会社の本業とは別の収入源を持つ働き方に注目が集まっています。

※「複業」については、コラム(「複業」からはじまるパラレルキャリア)で取り上げておりますので、よろしければ上記の記事もご参照ください。

・「好きなことだけで稼ごう」とすることのデメリット


これまでの「雇われ続ける働き方」が難しくなってくる時代には、こうした1社のみから給与を得るよりも、本業を持ちながら副業と掛け合わせる「ハイブリッド・ワークスタイル」を著者は提唱しています。

キャリアアドバイスではよく「好きなことを仕事に」という言葉が聞かれますが、こうしたときに注意すべきことは「好きなことだけで稼ごう」とすることです。

一見、好きなことを仕事にできれば、技術の習得に熱心になったり、仕事にも前向きな気持ちで臨めそうに思えますが、常に順風満帆の状態で仕事が進んでいくとは限りません。

もし、好きなことを仕事にしたことでうまくいかない状態になれば、仕事の失敗が自身の人生そのものへの否定に直結します。

「好きなことだけで稼ぐ」とは、「背水の陣」を引くことと同じで、こうしたリスクの高い生き方を選択することを著者は勧めていません。

・本業と副業を掛け合わせる「ハイブリッド・ワークスタイル」


本業は本業で割り切って仕事をし、副業のなかで思う存分、好きなことにチャレンジする。

「ハイブリッド・ワークスタイル」であれば、会社のみに収入を依存するリスクを減らしながら、新しいキャリアへ挑戦することができます。

こうした本業と副業を掛け合わせて仕事をするときに意識したいのが、仕事の「エフォート率」だと著者は述べます。

「エフォート率」とは、仕事をどのように配分するかということで、たとえば「副業に挑戦したいが、本業が忙しくそれどころではない」ときには、おそらく本業のエフォート率が9割超で、残りに割けるのは1割にも満たない配分になっているでしょう。

もし一社からの収入のみに頼る生き方をするのであれば、そのままで取り組むしかありません。

しかし、たとえば本業の割合を8割、7割と少しずつでも減らしていけるのであれば、残りの時間と労力は、新たな副業などに割くことができるようになります。

もし5割まで減らすことができれば、本業と並んで、新たな分野に挑戦できるだけの時間と労力が生まれているでしょう。

・今後のキャリアにとって役立つものを見極める「キャリアエフォート・マネジメント」


そして二つ目に重要になるのが「キャリアエフォート・マネジメント」で、今後のキャリアを見据えて、どの分野に時間やコストを割くべきか、戦略を立てていきます。

自身の今後のキャリアにとって、役立つものとそうでないものを振り分け、「これは自身のキャリアと関係がない」と判断したものについては、仕事を引き受けないようにしたり、その行動を止めるというものです。

いわゆるキャリアの『選択と集中』です。

長い視点で見たときに自身のキャリアに役立つものに集中していき、そうでないものについては「勇気ある撤退」をすることで、キャリアを最適化することができます。

こうした計画性をもって臨めば、徐々に「キャリアは運」の状態から脱却し、自身の望む方向へとキャリアを舵取りできるようになっていくでしょう。

『今すぐ転職を考えていない人のためのキャリア戦略』には、こうしたキャリア選択のコツと理論がまとめられています。

人生で大きなウェイトを占めるのが「働き方」や「キャリア」です。それらを「運」任せにはしたくない、という方に本書を勧めます。

(了)

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