「複業」からはじまるパラレルキャリア「スタンフォード式 世界一やさしいパラレルキャリアの育て方」書評
近年になって注目されている働き方に「複業」があります。
2018年頃から副業解禁の流れが生まれはじめ、本業とは別の仕事を掛け持ちしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
『スタンフォード式 世界一やさしいパラレルキャリアの育て方』の著者である江端浩人氏は、「ココナラ」や「クラウドワークス」といったクラウドソーシングのサービスが普及した現在、こうしたサービスを複業(副業)に利用しない手はないと言います。
最近では「FIRE(経済的に独立できる十分な資金を得て早期退職すること)」という言葉が流行になりました。
しかし、その動機にあるのは仕事に「やりがいがない」「楽しくない」という気持ちが大きいからではないか、と著者の江端氏は指摘します。
こうした「やりがいがない」「楽しくない」仕事の状況を変えうるものが「複業」を通じて「パラレルキャリア」を歩むことです。
本書は、江端浩人氏がスタンフォード大学で培った経験から、複業のはじめ方や考え方について解説した本になります。
今回は『スタンフォード式 世界一やさしいパラレルキャリアの育て方』を参考に、「複業」によって「パラレルキャリア」を作っていくポイントをご紹介します。
・『SLASHER(スラッシャー)』というキャリアの歩み方
著者の江端氏は、『FIRE』に取って代わるキャリアの選択肢として、『SLASHER(スラッシャー)』を提唱しています。
『スラッシャー』とは、複数の肩書を持つひとのことで、たとえば「エンジニア/コンサルタント/ライター」といったように、「/(スラッシュ)」によって区切られるいくつもの専門領域を持ったひとを指します。
それぞれの肩書は、関連していても、そうでなくても構いません。
新しいパラレルキャリアを歩もうとするとき、まずは「名乗ること」が重要だと本書の中で述べられています。
そうすることで世間話の話題になったり、相談を持ち掛けられる機会が増え、結果的に仕事に繋がることもあると言います。
・「複業」のメリットは、仕事を自分で決められること
「複業」のメリットとしては、「自己決定」によって仕事を進められるという点にあります。
本業であれば、断れない仕事や付き合いがあったり、上司や部下、クライアントとの関係は簡単には切ることができないものです。
しかし、複業に挑戦してみると、仕事を受ける、受けないも自由ですし、どんな職種の仕事を選ぶか、誰と仕事をするかも、個人の判断に委ねられています。
こうした「自己決定」ができるひとは「幸福度が高い」というデータが、神戸大学社会システムイノベーションセンターの調査から出ていて、これは「学歴が高い」ことや「年収が高い」ことよりも上回っていたと言います。
「複業」のなかでも一番大きなメリットはここにあって、自分で仕事を決められる裁量権を持つことが、こうした満足度に繋がっていると著者は述べます。
「スタンフォード式 世界一やさしいパラレルキャリアの育て方」には、複業をはじめるためのアドバイスが70個、掲載されているので、そのうちのいくつかをご紹介します。
・やりたいことを見つけるためには「3ヵ月ごとの趣味」を持つこと
本書の第一章では、「やりたいこと」と「ニーズがある仕事」を見つけるためのポイントが書かれています。
たとえば「やりたいこと」を見つけるための考え方として、「3ヵ月ごとの趣味を持つこと」、が挙げられます。
スタンフォード大学をはじめとするアメリカの大学では、部活動がシーズンごとに変わっていくと言います。
たとえば春には野球部、秋にはサッカー部やアメフト部、冬はレスリングやバレーボールといったように、主に3ヵ月ごとの季節の区切りで所属する部活動が変わっていくのだそうです。
季節ごとのシーズン制になっていることで、様々な部活を経験することができ、その中で自分の適性を見つけていく、といいます。
こうしたアメリカの大学の文化から、新しいことに挑戦するときは、3ヵ月くらいを目安にしながら、「好きなこと」や「得意なもの」を探すとよいと著者は述べます。
「複業」のポイントは、1つのことが100%できることを目指すのではなく、3つのことを70%できればいい、という考え方です。
3ヵ月、いままでとは違った新しいことに挑戦して、楽しいと感じたらそのまま続ける。駄目だったら次の3ヵ月で新しいものに取り組んでいきます。
また「得意なもの」「好きなもの」を見つけたあとも、新しいことに挑戦するのを止めないことがポイントだと言います。
「得意なもの」は継続し、そうでないものは止めて新しいものに挑戦していく。これを繰り返せば、やりたいことが明確になり、どんどんユニークな存在になれます。つまり、自身の市場価値を高めることにつながるのです。
「得意なもの」と判断したものの中でも「とくに得意だ」と感じたものは、トップ1割、あるいは5%に入るように頑張ってみるといいでしょう。
ただ、得意なものが見つかっても、新しいものに挑戦することを止めてはいけません。得意なものはどんどんストックしていき、新しいものへの挑戦も継続するのです。
「スタンフォード式 世界一やさしいパラレルキャリアの育て方」江端浩人著 かんき出版(2021)
いきなり「複業」に踏み出そうとしても、やりたいことが分からなかったり、どの業種に挑戦したらいいのかと悩むこともあるでしょう。
そんなときに、まずは「3ヵ月」続く趣味を探してみることから、はじめるといいかもしれません。
・Googleの「70対20対10」の法則
「複業」で新たな分野に踏み出そうとしたり、これまでのキャリアとは違うものを選ぼうとするとき、不安は付き物です。そんな時に、参考にしてみてほしい考え方があります。
それが、本書のなかで紹介されているGoogleの「70対20対10」の法則です。
これは、Googleの元会長・CEOのエリック・シュミット氏が採用した資源の分配方法のことで、実際にGoogleの社内でプロジェクト管理に使われていた経緯があります。
「70対20対10」の法則をご存じでしょうか。これはGoogle元会長兼CEOのエリック・シュミット氏がGoogleを成長させていく過程で用いたリソース配分のルールです。
簡単にいえば、70%は「うまくいっていること」に、20%は今までの「改善」に、10%%はまったく「新しいこと」に配分すると、うまくいくとの考え方です。人も資源も時間も、この比率で配分します。
「スタンフォード式 世界一やさしいパラレルキャリアの育て方」江端浩人著 かんき出版(2021)
普段から行っていることをすべて変えようとしなくていいので、その内のたった10%でもいいので、新しいことをやってみようと考えると、できそうな気がしませんか?
著者の江端浩人氏は、「1日48分」は新しいことに挑戦してみることを勧めています。これは1日の活動時間が16時間あるとして、その内の5%にあたる時間です。
この5%の時間を、これから「複業」でやってみたいこと、これまで「やりたかったけれど、できずにいたこと」に充ててみると、少しずつ新しいキャリアが開けていくのではないでしょうか。
もちろん、新しいことをはじめてすぐに仕事に繋がったり、得意なことを見つけられることは少ないかもしれません。
ですが、「うまくいかなかった」ことを一つ一つ潰していくことで、段々と適性のある分野や、自分の持ち味を活かせる職種に近づくことができます。
・まとめ 「複業」は会社に依存しないキャリア形成に役立つ
もし仮に、本業に就いてそれが望んだ仕事ではなかった場合、どうしても会社に依存する形のキャリアにならざるを得ません。
しかし、たとえ趣味の範囲でも新しいことに取り組み続けるとしたら、思わぬところからキャリアが開ける可能性があります。
今回、記事でご紹介したのは本書のごく一部ですが、「複業」をはじめる上で、ヒントになる考え方や様々なテクニックが充実しています。
「複業」や「パラレルキャリア」に興味がある方は、「スタンフォード式 世界一やさしいパラレルキャリア」の本を手に取ってみてください。
いままで読まなかった本を読むことも、きっと新たな分野へ踏み出す第一歩となるでしょう。
(了)
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